書籍紹介も10回目を迎えました。

最近私が気に入っている指標はPSRですが、これを使い始めたのはこの本を読んだ影響です。『フィッシャーの「超」成長株投資』の著者であり、あのウォーレン・バフェット氏の投資法にも影響を与えたフィリップ・フィッシャー氏の息子が著者ケン・フィッシャーです。

スーパー株式とは? 

本書では「スーパー株式」を以下のように定義しています。

・3〜5年間で購入時よりも株価が3〜10倍となる株式
・不良会社と同水準の価格で購入できる「スーパー企業」の株式 

ここでいうスーパー企業とは、実質15%(インフレ調整後)で毎年成長する企業のことです。

つまりスーパー企業の株式をある水準より安く買えたとき、それがスーパー株式となります。これを探し出すための方法論を説明したのが本書と言えます。

例えば私の保有株のトラスト・テックは2010年〜2015年において平均年率15%以上成長していますのでスーパー企業です。


PSRを考えることの意味


スーパー株式を見つけるには、PSR(Price Sales Ratio)、株価売上倍率という指標を理解し、使いこなすことが重要とのことです。PSRは時価総額÷売上(または株価÷一株あたり売上)で計算できます。


PSRはPERに似た指標ですが、著者はPERという指標が嫌いだそうで、PERの欠点とPSRの素晴らしさについて熱く語っています。ここで、PSRとPERの関係について考えてみます。売上に純利益率をかけると、当たり前ですが純利益になります。一株あたりで考えても同じことなので、

一株あたり売上×純利益率=一株あたり純利益(EPS)

これを変形してPSRとPERの関係が導かれます。

PSR=PER×純利益率

これからわかるように利益率はPSRとPERを結びつけるものです。例えば、PSR=0.75倍とは純利益率7.5%の企業にとってPER10倍で評価されていることに相当します。


私の理解では、PERだけによる株分析を利益率分析(ファンダメンタル分析)とPSR分析(バリュエーション分析)とに分解することで、成長株に対してより深い分析ができると著者は言いたいのだと思います。これがPSRを考えることの意味だと思います。


本書ではPSRを補うバリュエーション分析法としてPRR(株価研究費倍率)という聞きなれない概念も紹介しておりその考察部分は一読の価値があります。

また、ファンダメンタル分析法としての利益率分析に関しても、将来的に利益率の拡大をもたらすものは何なのか、注目すべき事項を丁寧に説明しています。このあたりは数値化が難しくどうしても芸術の域を超えませんし、必ずしも著者に同意できない部分があるのですが、株式投資の醍醐味はここにあるんだと思い楽しく読むことができました。


本書の後半ではたくさんの実例とともにPSRの使い方が紹介されています。1980年代の本なので、登場する企業の事業内容こそ古臭いですが、投資した企業が大きなリターンをもたらすストーリー(著者の自慢話)については、今読んでも違和感がありません。今も昔も株で大儲けするパターンは変わっていないと思います。


私の投資法との関係


成長企業の利益率はその成長過程において大きく変動するものです。一時的に利益が減少し、場合によっては赤字となり、株価は大きく下落します。これを著者はグリッチと呼んでいます。


グリッチは成長企業ならばほとんど避けて通れないものですが、人はそれに文句を言うもので、本質的な価値以下に株価が暴落してしまいます。でもやがて再び軌道に乗り、株式市場での人気を取り戻すことで、利益の伸び以上のペースで株価が上昇することになります。旧)エナフンさんの梨の木で紹介されている、Jカーブ上昇の概念と近いものがあります。


上で書いた今も昔も変わらない、株で大儲けするパターンとはまさにこのことで、その買い時と売り時を判断するのに非常に便利な指標がPSRなんだなと、気づかされました。買うタイミング次第でスーパー企業の株式はスーパー株式にも普通の株式にもなるのです。

ちなみに2015年4月現在、保有株のまんだらけは予想PSR0.56倍で、グリッチに陥っている可能性があると考えています。まあ、違うかもしれませんが、ホームランを狙っている以上多少の失敗はつきものです。


オススメしたい読者層 


原典がそうなのか、翻訳のせいなのか不明ですが、読みやすい文章ではありません。投資経験が少ない方には向かないと思います。そのような方はまずは他の本で勉強しましょう。


PERやPBRを使った割安株投資に関しては多くの投資本がありますし、ブロガーさんもたくさんいらっしゃるので、勉強するのは難しいことではありません。しかし、PSRとなると極端に情報量が少なくなります。他人を出し抜くためには、他人が使っていない情報を使うことが有効であり、PSRを理解することで投資力の幅が広がることは間違いありません。ということで中級者以上の方にオススメします。


本書はPSRを使う投資家にとってのバイブルのような存在だと思います。最後に株式投資で大きく儲けるためにいつも覚えておきたい一文を引用します。
最も収益性の高い普通株投資は「若くて急成長中で、今のところウォール街での人気が今ひとつ」という銘柄からもたらされる