久しぶりの書籍紹介です。今回が第11回目となります。

『株で富を築く バフェットの法則』の姉妹編として書かれた本ですが、個人的にはこちらのほうが好きです。Amazonのレビューではあまり評価が高くないだけに、あまり期待して読まなかったのですが、いい意味で期待を裏切られています。あまり万人受けする本ではない(特に初心者向けではない)のは間違いないですが、気づかされる点がたくさんありました。



フォーカス投資戦略とは

原著の副題は"Mastering the Power of the Focus Investment Strategy"となっており、こちらのほうが具体的な内容をよく表していそうです。日本語にすると、「フォーカス投資戦略の能力習得」といった意味になるのでしょうか。


アクティブ・ポートフォリオ運用とインデックス投資という、今なお論争が続いている対立する二つの投資戦略があります。フォーカス投資はこのどちらでもない第三の選択肢と言えます。

その真髄とは、

長期にわたって平均を上回る投資収益率を上げそうな少数の銘柄を選び、投資の大部分をこれらの銘柄に集中し、目先的な下げ相場でも保有し続ける不屈の精神を持つ

ということだそうです。どうやってその少数の銘柄を選ぶのかとか、少数とは何銘柄かとか、いつまで保有すればいいのかとか、様々な疑問がわくと思います。著者によれば、これらの疑問に対する十分な説明が本書ではなされているとのことですが、それには少し疑問符がつきます。


結局は自分で考えないといけません。でも何を考えればいいのかという指針はこの本が与えてくれると思います。投資は自己責任である以上、それだけで十分ですが。


投資は確率論

バフェットが使っているか定かではありませんが、ケリーの法則と呼ばれる以下の式が第6章で紹介されています。

2p-1=x

勝つ確率の2倍マイナス1は、賭けるべき資産の比率に等しいという意味です。(上記は勝ったら賭け金が倍になるギャンブルの場合です)

つまり100%(つまり確率1)勝てる勝負には2×1-1=1で全財産をつぎ込むべきだし、70%勝てる勝負には2×0.7-1=0.4で40%を賭けると資産の増加速度が最大になります。


さて、このこと自体は『天才数学者はこう賭ける』でも詳しく説明されており、数学的には間違っていないと思われます。しかし問題は、勝てる確率は事前にはわからないし、株式投資においては同じ状況は二度と繰り返されないため検証もできないということです。

「損失の確率に起こりうる損失額を掛けた額を、利益の確率にありうる利益額を掛けた額から差し引くこと。これが我々が試みようとしていることだ」
ウォーレン・バフェット

という言葉からも、バフェットが”確率”を想定し、期待値を計算していることは明らかです。ここでの確率の使い方は、確率の主観的解釈と呼ばれるものであり、フォーカス投資成功の秘訣はこれを理解し使いこなすことに尽きると思います。結局、勝てる確率は事前にはわからないが、自分の仮説が合理的だと信じるのであれば、それを正しい確率として使うべきなのです。(もちろん、合理的な仮説を立てる訓練が不可欠なわけですが、それはこの本の範囲外です)


株式投資で考える確率は、たった一回限りの確率です。長期の統計的な規則性に頼ろうとする人には理解できないかも知れませんが、投資家としての幅を広げるためにも、この”確率”はよく訓練して使うようにすべきだと思います。


鋭い分析をする投資家の意見を、ブログやtwitterでよく目にしますが、その表現が全く確率論的でない場合は全く信用できません。


自信の大きなもの(主観的確率の大きなもの)に大きなポジションをとることが、平均以上に資産を増やすために必要なことです。逆に広く分散しているポートフォリオは、それを構成するそれぞれの銘柄に対してほとんど自信がないことを意味します。

本書はこのあたりを突っ込んで解説してあり、他に類を見ないと言えるでしょう。


別の投資成果の評価基準を開発せよ

というアドバイスに本書は一章分を割いています。投資成果の評価基準は一般的には市場インデックスであり、個人投資家の多くもそうしているのではないでしょうか。別の投資成果の評価基準を作ること、これは確かにフォーカス投資(集中投資)するうえでとても重要なことです。なぜなら、時として市場平均を大きく下回る期間をほぼ確実に味わうことになるからです。人間の精神力がそんなに強くないのは、最近の下落相場で皆さん実感したところではないでしょうか。


私の場合も、ポートフォリオの売上高、ルックスルー利益を計算しており、これを毎年伸ばしていくことを目標にしています。インデックスと比較しますし、パフォーマンスも計算していますが、これは参考程度にしか考えていません。(個人投資家パフォーマンスランキングに載せてもらうためだけに計算しています)


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